社会人に最も必要な知識のひとつが財務諸表に関する知識です。日商簿記2級の勉強を通して財務諸表の作成に加え、原価計算の基礎を身につけることがができます。今回は日商簿記2級に合格するための勉強法を紹介します。
日商簿記2級の概要
・試験日:6月の日曜日(目安2週目)と11月の日曜日(目安3週目)と
2月の日曜日(目安4週目)
午前の120分間
・合格率:25%から35%
・合格点:70%
※日商簿記2級の形式は記述式
簿記2級は年3回試験が実施されます。試験は午後に行われますので、午前に行われる簿記3級や簿記1級と併願で受験可能です。
合格点は100点中の70点となっています。合格率は調整が行われないため、2級は特に実施回によるばらつきが大きいのですが、簿記の試験とはそういうものです。問題形式は大問5つに別れており、出題構成は以下の通りです。
- 問1:仕訳 20点(4点×5問)
- 問2、3:商業簿記 大問20点×2
- 問4、5:工業簿記 大問20点×2
日商簿記2級の範囲は商業簿記に加え、工業簿記と言われる分野も対象となります。商業簿記は3級でも勉強されたかと思いますが、個人事業主レベルでの財務諸表作成を目標とする3級のレベルより、中小企業レベルでの財務諸表作成が目標となる2級は同じ商業簿記でも範囲が広がります。また最近、2級の商業簿記の範囲にもともと1級の範囲だったものが含まれるようになり、単純に難化しています。そのため、今まで以上にポイントを効率的におさえて勉強することが重要となります。
商業簿記の範囲
2級からの特有な論点は次のようになります。
- 銀行勘定調整表
- 有価証券の処理
- 営業外の手形の処理
- 引当金の処理
- 営業外の手形の処理
- 圧縮記帳
- 有形固定資産の除却、廃棄
- 建設仮勘定
- 無形固定資産
- 投資その他の資産
- リース
- 外貨建取引
- 収益・費用の認識基準
- 税効果会計
- 未決算
- 本支店会計
- 連結会計
少し昔に合格した方が見れば、昔は1級の論点だった範囲が含まれていることを見て驚かれるでしょう。とはいえ、2級では基礎的な部分が問われていますので、むしろポイントをおさえ得点源としていきたいところです。
工業簿記の範囲
工業簿記の主要な論点は次のようになります。
- 原価計算
- 有価証券の処理
- 材料費計算
- 労務費計算
- 経費計算
- 製造間接費計算
- 部門費計算
- 個別原価計算
- 総合原価計算
- 標準原価計算
- 原価予測
- 直接原価計算
- 営業費計算
- 工場会計の独立
このようにあげるとどれも新しい論点でとっつきにくく感じてしまうかもしれませんが、実は2級の工業簿記はそれほど難しくありません。用語こそ似ているものの、それぞれの意味や違いを理解できれば、得点源にできるでしょう。
対策と勉強方法
簿記2級の合格点は70点ですから、得点としては問1で16点、問2、3で各13点、問4、5で各14点あたりが目標になるでしょう。私の場合は問1の問題文を読み取ることが苦手だったので、問4、5は満点を狙って受験しました。
日商簿記2級については新しい論点が多く、また教科書で一から学んで行くことになります。その際には仕訳を覚えるとともに、似た用語や考え方の違いを意識しながら理解していきましょう。本番の試験でも似た用語がある箇所が問われやすく、本番でどっちがどっちだっけ?と焦ることがないようにしましょう。
3級以上に問題演習の重要性は増します。特に工業簿記はボックス図を書けることがそのまま得点に繋がりますので、一つ一つ丁寧に問題に取り組んでいきましょう。
3級のときには図や説明が多く使いという理由でスッキリシリーズやパブロフシリーズの参考書を推奨しましたが、2級からは内容の網羅性や充実性の観点から以下の合格テキストシリーズをおすすめします。
初学者にありがちな失敗は概念の理解に時間の大半を費やしてしまうことです。簿記(仕訳)の考え方は会計学という抽象的な概念に基づいていますが、会計学の理解には公認会計士試験に合格するような相当の時間が必要です。ある程度は形から覚えるというスタンスで割り切ることも必要です。
簿記2級でも難しい計算が出ない一方、集計の記載方法や計算方法が独特で、特に初学者の方には正しく転記・集計していくことが求められます。
机上で電卓を叩き、紙と鉛筆を使い問題を最後まで解くことで、理解できていない箇所や間違えやすい箇所を確認するようにしましょう。